危険予知と介助方法

◇ハインリッヒの法則

ハインリッヒの法則 (ハインリッヒのほうそく、Heinrich’s law) は、労働災害における経験則の一つである。1つの重大事故の背後には29の軽微な事故があり、その背景には300の異常が存在するというもの。「ハインリッヒの(災害)三角形(トライアングル)(定理)」または「(傷害)四角錐(ピラミッド)」とも呼ばれる。

◇ハインリッヒの法則の概要
法則名はこの法則を導き出したハーバート・ウィリアム・ハインリッヒ(Herbert William Heinrich)(1886年 – 1962年)に由来している。彼がアメリカの損害保険会社にて技術・調査部の副部長をしていた1929年11月19日に出版された論文が法則の初出である。
彼は、ある工場で発生した労働災害5000件余を統計学的に調べ、計算し、以下のような法則を導いた。「災害」について現れた数値は「1:29:300」であった。その内訳として、「重傷」以上の災害が1件あったら、その背後には、29件の「軽傷」を伴う災害が起こり、300件もの「ヒヤリ・ハット」した(危うく大惨事になる)傷害のない災害が起きていたことになる。
更に、幾千件もの「不安全行動」と「不安全状態」が存在しており、そのうち予防可能であるものは「労働災害全体の98%を占める」こと、「不安全行動は不安全状態の約9倍の頻度で出現している」ことを約75,000例の分析で明らかにしている

◇危険予知訓練
危険予知訓練(きけんよちくんれん)は、工事や製造などの作業に従事する作業者が、事故や災害を未然に防ぐことを目的に、その作業に潜む危険を予想し、指摘しあう訓練である。ローマ字による表記 Kiken Yochi Training の頭文字をとってKYT(ケーワイティー)、あるいはKY訓練/KY活動(KYK)とも呼ぶ。ツールボックスミーティング ToolBoxMeeting およびその頭文字TBM(ティービーエム)の呼び方も、特に建設・土木工事現場で用いられている。

・手法
種々の活動手法が用いられるが、4ラウンド法が最もポピュラーである。その一例は次のとおり。
まず、職場や作業現場等の何気ない日常の風景を写真に撮ったりイラスト図を書いたりして、それらの図表を作業チームの前に提示する。

1. 現状把握 — どんな危険が、ひそんでいるか
どのような危険が潜んでいるか、問題点を指摘させる。
問題点の指摘は自由に行わせ、他のメンバーの指摘内容を批判するようなことは避ける。

2. 本質追究 — これが、危険のポイントだ
指摘内容が一通り出揃ったところで、その問題点の原因などについてメンバー間で検討させ、問題点を整理する。

3. 対策樹立 — あなたなら、どうする
整理した問題点について、改善策、解決策などをメンバーにあげさせる。

4. 目標設定 — 私たちは、こうする
あがった解決策などをメンバー間で討議、合意の上、まとめさせる。
合意結果は、工場内に掲示したり、朝礼などで発表したりして、メンバー間の共通認識として情報を共有し、事前の危険回避を図る。 このような活動を定期的に行ううちに、日常の作業をただ流すだけでなく、常に、何か危険は潜んでいないかと各自に考える習慣を持たせることも期待できる。

◇介助方法
・立ち上がり
椅子からの立ち上がり動作は、大きく2つの相に分けることができます。重心を足部へ移動する屈曲相、重心を上に持ち上げる伸展相があります。さらに屈曲相は、頚・体幹を屈曲し重心を約1/2程度足部に移動する前傾相、体幹を前に引き出すとともに膝が前に滑り出る前進相の2相に分けられます。

椅子から立ち上がる際には、前傾相→前進相→伸展相の順で立ち上がっていきます。
椅子からうまく立ち上がれない場合、前傾相と前進相が不足していることが原因と考えられます。足部に重心が乗っていない状態で伸展相に入ると、後方に転倒し立ち上がれません。

立ち上がり動作を行う際にはいくつかのポイントがあります。
まず、立ち上がる前に足部を後方に引くことです。目安は、足部の内外果(くるぶし)が膝関節よりも後方にくる程度です。足部が後方にあることで、重心が足部に乗りやすくなります。
そして、しっかりと前傾相をとることです。前傾相が少ないままで立ち上がろうとしてもうまく立ち上がることはできません。しっかりと体幹を屈曲することで、重心が足部に乗るやすくなります。目安としては、お辞儀をするような感じです。

特に立ち上がり動作がうまくいかないのは、脳卒中片麻痺の患者さんに多いので、これら3つの相を十分に理解したうえで指導すれば、立ち上がりの自立につながります。立ち上がりが自立することで介助量を大幅に軽減することが可能です。

・移乗
  車椅子からベッドへ ~片麻痺の全介助の移り方(右片麻痺)~
 

①移乗しやすいように健側(麻痺してない側)がベッド側(移動したい場所)になるように近づける。
②対象者の腰を前方に引き寄せ、浅く腰掛けるようにする。
③介助者は膝の内側で対象者の麻痺側の膝をはさみ支えます。両手で対象者のズボン(またベルト等)を握ります。
④前へ傾けるようにして立ち上がります。対象者の膝と上半身をしっかり固定したまま、介助者は体重を後方にかけて身体を回します。
⑤対象者のお尻がベッドに向くまで回し、ゆっくり腰をおろすように座らせます。
*他に参考資料は別紙にて

◇まとめ
 日常的に施設の設備や利用者、スタッフの行動や特性を把握しましょう。利用者やスッタフが、どんな行動をするかを予測しましょう。その行動に対して、どのような危険性があるか想像しましょう。危険な因子はできる限り即座に排除しましょう。機械の操作も同様に、機械の特性を理解した上で危険な使い方をしなければ、事故は未然に防げます。
介助する際には、正常な動作を意識しましょう。介助するときには、動きの中で足りない部分を補うように安全に配慮して介助しましょう。また、対象になる方の疾患や苦手な動作やリスクを把握しましょう。教えてもらうこと以外にも、自身でも調べることでより記憶に残りますし、しっかりと自分の知識になります。